【遺言シリーズ第5回】デジタル遺言はいつから使える?2026年の民法改正を司法書士が解説
茅ヶ崎・湘南エリアの皆様、こんにちは。
JR茅ヶ崎駅から徒歩3分の木村光太朗司法書士事務所、代表司法書士の木村光太朗です。
遺言シリーズの第5回目となる今回は、2026年の民法改正によって新設されることになった「デジタル遺言」について解説します。
結論からお伝えすると、デジタル遺言の制度は法律として成立していますが、2026年8月現在、まだ利用することはできません。
パソコンやスマートフォンで遺言書を作成し、そのデータを保存しておくだけでは、現時点では法律上有効な遺言書にはならないため注意が必要です。
■ 1. デジタル遺言の正式名称は「保管証書遺言」
2026年6月17日、「民法等の一部を改正する法律」が成立し、同月24日に公布されました。
この改正によって新設されるのが、一般に「デジタル遺言」と呼ばれている「保管証書遺言」です。
保管証書遺言では、パソコンなどで作成した電子データによる遺言書も利用できるようになります。
これまでの自筆証書遺言のように、原則として全文を手書きする必要がなくなる点が大きな特徴です。
ただし、単にパソコンで遺言書を作成して保存すればよいわけではありません。
遺言者本人が法務局の遺言書保管官に対し、作成した遺言の全文を口頭で述べたうえで、法務局に遺言書を保管してもらうことが効力発生の条件となります。
本人確認や意思確認を受けず、自宅のパソコンやクラウド上に保存されているだけのデータは、保管証書遺言には該当しません。
■ 2. デジタル遺言はいつから利用できる?
デジタル遺言の具体的な開始日は、まだ決まっていません。
法律上は、公布日の2026年6月24日から3年以内に、政令で定める日から施行されることになっています。
したがって、遅くとも2029年6月頃までには制度が始まる予定ですが、2026年8月現在、法務局へデジタル遺言の保管を申し込むことはできません。
今すぐ有効な遺言書を作成する場合は、これまでどおり、主に次の方法から選ぶことになります。
・本人が手書きで作成する「自筆証書遺言」
・公証人が関与して作成する「公正証書遺言」
「近いうちにデジタル遺言が始まるなら、それまで待とう」と考える方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、病気や認知症によって遺言能力が失われてしまうと、新しい制度が始まっても遺言書を作成できません。
遺言書は、制度の開始を待つことよりも、判断能力がしっかりしているうちに作成することの方が重要です。
遺言書を作成する時期については、前回の「『認知症』になってからでは遅い?遺言書を書くべき正しいタイミング」でも解説しています。
■ 3. 現在の自筆証書遺言との違い
現在の自筆証書遺言は、財産目録を除き、遺言者本人が本文、日付及び氏名を手書きし、押印して作成する必要があります。
今回の法改正では、自筆証書遺言の押印義務も廃止されることになりました。
ただし、押印義務の廃止にも別途施行日が定められるため、2026年8月現在は、これまでどおり押印が必要です。
法務局には、現在も「自筆証書遺言書保管制度」があります。
手数料3,900円で自筆証書遺言を保管してもらうことができ、紛失や改ざんを防げるほか、死亡後の家庭裁判所における検認も不要になります。
もっとも、法務局が確認するのは主に遺言書の形式です。財産の分け方に法的な問題がないか、遺留分への配慮が十分か、遺言内容を実現できるかまで保証してもらえる制度ではありません。
現在の自筆証書遺言書保管制度と、今後始まるデジタル遺言は、別の制度として理解する必要があります。
■ 4. デジタル遺言が始まれば、公正証書遺言は不要になる?
デジタル遺言が始まっても、公正証書遺言の重要性は変わらないと考えています。
公正証書遺言は、公証人が遺言者の意思を確認し、法律的に整理した文案を作成します。
証人2名が立ち会い、遺言の原本も公証人側で保管されるため、形式上の不備や紛失、改ざんのリスクが非常に低い方法です。
特に、次のような場合は、今後も公正証書遺言をお勧めします。
・子供のいないご夫婦
・再婚しており、前の配偶者との間に子供がいる方
・相続人ごとに財産の取得割合を変えたい方
・相続人ではない人や法人へ財産を遺贈したい方
・疎遠な相続人がいる方
・不動産を特定の人に確実に承継させたい方
・遺言能力をめぐる争いが心配な方
・司法書士などの専門家を遺言執行者に指定したい方
デジタル遺言は、手書きの負担を減らし、遺言書を作りやすくする制度です。
一方、公正証書遺言は、遺言内容の確実性や、相続開始後の手続の円滑さを重視した制度です。
目的や家族関係、財産の内容に応じて選ぶことが大切です。
■ 5. デジタル遺言についてよくある質問
Q.現在、Wordで作成した遺言書に氏名を入力すれば有効ですか?
いいえ。2026年8月現在、パソコンで作成した遺言書を印刷しただけでは、自筆証書遺言として有効になりません。
デジタル遺言の制度もまだ開始されていません。
Q.スマートフォンに遺言を録音・録画しておけば有効ですか?
通常の状況では、録音や動画だけで有効な遺言書を作成することはできません。
ご家族へのメッセージとして残すことはできますが、財産の承継について法的効力を持たせるには、法律で定められた方式による遺言書が必要です。
Q.デジタル遺言が始まるまで待った方がよいですか?
お勧めしません。遺言書は、ご本人に十分な判断能力があるうちに作成しなければなりません。
必要であれば、現在の制度で遺言書を作成し、将来、家族関係や財産状況が変わったときに見直すことができます。
■ 6. 茅ヶ崎・湘南での遺言書作成は当事務所へ
デジタル遺言によって遺言書の作成方法は変わりますが、「誰に、どの財産を、どのように残すか」を慎重に考える必要があることは変わりません。
相続登記や成年後見の実務に携わっていると、遺言書が1通あれば防げたはずのトラブルを数多く目にします。
当事務所では、公正証書遺言や自筆証書遺言の文案作成、公証人との事前調整、必要書類のご案内、遺言執行者の指定まで、ご希望に応じて一貫してサポートしております。
「自分の場合は、どの遺言書が適しているのか分からない」という段階でも問題ありません。まずはお気軽にご相談ください。
-------------------------------------
木村光太朗司法書士事務所
住所:神奈川県茅ヶ崎市共恵一丁目4番20-401号(JR茅ヶ崎駅徒歩3分)
電話:0467-84-8945(受付9:00~17:00、事前予約で時間外対応可)
HP:https://kimura-kotaro-office.jp/
執筆:司法書士 木村光太朗
【参考資料】


