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認知症になると資産がどうなる? 財産管理が困難になる理由とリスク
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家族信託とは何か? 認知症対策としての仕組みとメリット
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成年後見制度との違い:それぞれの特徴と家族信託を選ぶメリット
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手続きの違い:成年後見は裁判所での手続きが必要で、後見人の選任や定期報告など煩雑です。一方、家族信託は家族間の契約によって成立し、公証役場での公正証書作成などは必要ですが、裁判所の関与は原則ありません。
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財産処分の自由度:後見人制度では、資産の処分や運用には慎重な制限があります【たとえば、不動産売却には裁判所の許可が必要】。家族信託では、信託契約で定めた範囲内で受託者が判断して資産を動かせるため、状況に応じた柔軟な資産活用が可能です。
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費用や負担:成年後見では専門家が後見人になる場合、報酬が発生し毎年の報告事務も伴います。家族信託でも契約書作成に専門家のサポートを依頼すれば費用はかかりますが、信託が始まってからの継続的な報告義務はありません。
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【役員変更登記】を怠るとどうなる?知人や同業者にも伝えたい注意点
役員(取締役、監査役、理事など)が交代したときは、登記後2週間以内に法務局へ変更登記を申請しなければなりません。
株式会社の場合は、原則10年、一般社団法人やNPO法人の場合は原則2年です。
特に株式会社の場合、10年に一度の手続きなんて、会社内の誰も記憶に無いのではないでしょうか・・
ついつい後回しにしてしまいがちですが、放置すると思わぬトラブルの原因になります。ここでは、役員変更登記を怠った場合の主なリスクと、今すぐできる対策をコンパクトにご紹介します。
✅ 過料の支払い:最大で数十万円の負担も
役員変更登記を怠ると、法人ではなく代表者個人に過料(行政上のペナルティ)が科されます。
金額は数万円程度の場合が多いですが、事業の資金繰りに直結する出費である上、代表者個人の責任となるため、早めに手続きを済ませるに越したことはありません。
✅ 社会的信用の失墜:融資や取引が不利に
登記情報は誰でも閲覧できる公開情報です。登記簿の役員欄が実態と異なるままでは、「法的管理が甘い会社」と見なされてしまいます。
銀行の融資審査でマイナス評価になったり、新たな取引先から敬遠されたり、公的な補助金・助成金の申請が通りにくくなったり
というケースも報告されています。役員登記は会社の“名刺”のようなものですので、最新情報の維持は信用力の維持に直結します。
✅ “休眠会社”扱い→解散の恐れ
長い間登記を更新していないと、法務局から「休眠会社」とみなされ官報で通知されることがあります。
通知後も変更登記や届出をしない場合、自動的に解散処理が行われることもあるので要注意です。登記の放置は会社の存続すら危ぶまれるリスクをはらんでいます。
✅ 今すぐできる!役員変更の登記対策
任期をカレンダーで管理し、任期満了前に株主総会や理事会を開いて選任・退任の決議をする。
議事録や就任承諾書などの準備を計画的に進め、役員変更後すぐに登記申請できるようにする。
手続きが煩雑な場合は、司法書士などの専門家に依頼して正確かつ迅速に処理してもらう。
役員変更登記は、2週間以内に行うべき法律上の義務です。
「うちは小さな会社だから…」と後回しにしていると、思わぬ罰金や信用低下につながってしまいます。
経営者や代表者の方は、この機会に自社の登記情報を確認し、必要な変更があれば早めに手続きを進めましょう。
もしご不安があれば、専門家に相談することも大切です。法的手続きをきちんと行うことで、会社の信用と安定経営を守りましょう。
家族信託シリーズ 第4回:親が認知症になる前に備える家族信託の活用法
茅ヶ崎や寒川、藤沢など神奈川湘南地域でも、高齢の親の認知症対策として「家族信託」を活用するケースが増えてきています。
親が認知症になって判断能力を失うと、銀行口座が凍結されて家族であっても預貯金を引き出せなくなったり、不動産の売却や契約行為ができなくなったりする恐れがあります。
そのような事態に備え、親が元気なうちから家族信託を組んでおけば、親御さんの財産を柔軟に管理し、親の生活や相続対策に役立てることができます。
本記事では、認知症になる前に備える家族信託の活用法について、家族信託が有効な理由や任意後見制度との違い、信託の仕組み、契約のポイント、そして家族の合意形成の重要性を解説します。
家族信託が認知症対策として有効な理由
親が認知症を発症すると、本人名義の財産は資産凍結され、家族であっても勝手に動かすことができなくなります。
例えば、親名義の銀行口座からお金を引き出したり、自宅などの不動産を売却したりするには、親御さんに判断能力が必要ですが、認知症が進むとこれらが困難になります。
しかし、家族信託を利用して親の財産を信頼できる家族に託しておけば、親御さんの判断能力が低下した後でも、その財産を使って親の生活費や介護費用をまかなうことが可能です。
信託契約によって子供(受託者)が親の財産を管理・処分できる権限を持つため、銀行口座の凍結や不動産の売却不能といった事態を避け、親の生活を経済的に支えることができます。
✅ 認知症発症後も財産を柔軟に活用できる:家族信託なら、認知症になった後も預貯金の引き出しや不動産の処分がスムーズに行えます。
✅ 相続対策にも有効:信託契約の中で、親が亡くなった後の財産の引き継ぎ先(受益者の二次指定)を決めておくことができるため、遺産分割の手間や争いを減らす効果も期待できます。
このように家族信託は、親の認知症による資産凍結リスクを防ぐとともに、老後の生活資金の確保やスムーズな相続承継に役立つため、認知症対策として非常に有効な方法と言えます。
任意後見制度との違いや使い分け
親の認知症対策としては、家族信託のほかに任意後見制度(任意後見契約)も代表的な手段です。
「任意後見制度」とは、将来本人の判断能力が不十分になったときに備えて、事前に信頼できる人(任意後見人)を後見人に指定しておく制度です。
本人が元気なうちに公正証書で契約を結び、いざ認知症などで判断能力が低下した際には家庭裁判所に申立てをして契約を発効させます。
任意後見人には、財産管理だけでなく身の回りの世話や医療・介護の契約手続きを代理する身上監護の権限も与えることができます。
では、任意後見契約と家族信託は具体的に何が違うのでしょうか。主な違いを整理すると次のとおりです:
✅ 効力発生のタイミング:家族信託は契約を結べばすぐに受託者による財産管理を開始できます。一方、任意後見契約は契約後すぐには効力が発生せず、本人の判断能力が低下した後に家庭裁判所の手続きを経て任意後見人による支援が始まります。
✅ 扱える範囲(権限)の違い:任意後見人は預貯金や不動産の管理に加え、介護サービスの契約や入院手続きなど、身上監護の範囲まで含めて本人を支援できます。しかし家族信託の受託者はあくまで財産管理に関する権限のみで、親の介護方針の決定や医療同意などの身上監護は行えません。
✅ 裁判所の関与と管理の柔軟性:任意後見契約は将来発効すると家庭裁判所が任意後見監督人を選任し、後見人の業務を監督します。そのため定期的な報告義務や監督人への報酬支払いが生じ、公的なチェックが入る仕組みです。一方で家族信託は純粋な私契約であり、裁判所の関与がないため自由度が高く、家族の判断で柔軟かつ迅速に財産を運用できます。
それぞれの制度にメリット・デメリットがあるため、状況に応じた使い分けが重要です。
財産の積極的な運用・承継対策を重視するなら柔軟な家族信託が適しています。
一方、生活介護のサポートまで含めたい場合は任意後見契約が役立ちます。
また、両制度の併用も可能で、例えば不動産や預金の管理運用は家族信託で行い、医療・介護の契約手続きは任意後見人に任せるといった組み合わせにより、
親の財産と生活の両面を万全に備えることもできます。いずれの場合も親が認知症になる前、判断能力がしっかりしているうちに準備することが大切です。
信託財産を使って親の生活を守る仕組み
家族信託を利用すると、親御さんの財産を子供が信託財産として管理し、親の生活のために活用することができます。
典型的なケースでは、親が委託者(財産を託す人)兼受益者(財産から利益を得る人)となり、子供が受託者(財産を管理する人)となります。
親が所有していた不動産や預貯金などを信託契約によって受託者である子供名義に移し替えることで、それらが「信託財産」となります。
〈ケース例〉
藤沢市にお住まいのBさん(子)は、認知症が心配な母親のために家族信託契約を結びました。
母親(委託者・受益者)の自宅不動産と預金を信託財産とし、Bさんが受託者として管理します。
後に母親の判断能力が低下しましたが、Bさんは信託された預金を引き出して介護施設の費用に充て、自宅不動産も必要に応じて売却することで母親の生活資金を確保することができました。
このように信託財産であれば、親御さんご自身が契約や手続きを行えなくなった後でも、預けた財産を使ってその方の生活を支えることが可能なのです。
また、信託財産は受託者の固有財産とは法律上区別されるため、仮に受託者個人に借金やトラブルがあっても、信託財産が差し押さえられる心配は基本的にありません。
親の大切な財産を守りつつ、親のために使う仕組みが家族信託なのです。親御さんの生活を経済的に支えるうえで、家族信託は強力な手段となります。
実務上の注意点(受託者の選任や信託契約の内容)
家族信託を成功させるには、契約内容や運用方法をしっかり検討する必要があります。以下に、家族信託を組む際の主な実務上のポイントを挙げます。
※ 受託者を誰にするか:
信託財産を託す受託者は、財産管理の能力と信頼性を兼ね備えた人物を選びましょう。家族だからという理由だけで安易に選ぶのではなく、その人が責任感を持って親の財産を管理できるかを考慮します。
子どもが複数いる場合は、適任者を主たる受託者に決め、別の兄弟姉妹を予備的な受託者(後継受託者)として定めておくこともできます。
信頼できる親族がいない場合には、信託会社や信託業務を扱う専門家を受託者にする選択肢もあります。
※ 信託契約の内容設計:
信託契約書には、どの財産を信託の対象とし、受託者がどのような権限で財産を管理・処分できるかを具体的に定めます。
不動産を売却する権限や、預貯金から親の医療費・介護費用を支出する方法など、細かな取り決めを盛り込んでおくことが重要です。
また、信託の終了事由(通常は「委託者兼受益者である親が死亡したとき」)や、その後の財産の帰属先も契約で明記しておきます。
※ 信託財産とする資産の選定:
どの資産を信託に組み入れるかも検討が必要です。
典型的には親名義の自宅不動産や預貯金が信託財産にされますが、他にも株式や貸付金など、将来管理が難しくなりそうな資産があれば信託を検討します。
一方、日常生活に必要な少額の預金口座などはあえて信託せず親名義に残すケースもあります(ただし、それらの口座は認知症発症後に凍結されるリスクがある点に注意が必要です)。
信託財産の範囲は家族の事情に合わせて柔軟に決めましょう。
※ 親が亡くなった後の取り決め:
家族信託では、親(受益者)が亡くなった後に信託財産を誰に引き継ぐか(残余財産の帰属先)を契約で指定できます。
例えば「親が死亡したら信託財産を長男と長女で2分の1ずつ分配する」といった形です。
これを決めておけば、親の死亡後に改めて遺産分割協議を行わなくても、信託の定めに従ってスムーズに資産を承継できます。
後々の兄弟間の紛争防止にもつながるため、忘れずに取り決めをしておきましょう。
※ 契約手続きと専門家の活用:
家族信託の契約は公正証書で作成するのが一般的です。公証役場で公証人に作成してもらうことで、契約内容の証明力が高まり安心です。
不動産を信託する場合は法務局での信託登記も必要になります。
契約書の内容は専門的になるため、是非弊所にご相談いただき、サポートを受けながら進めることをお勧めします。
家族の合意形成の重要性
最後に、家族信託を進めるにあたっては家族の合意形成が欠かせません。
どんなに良い制度や契約を用意しても、家族内で理解と協力が得られていなければ円滑に機能しないからです。
親の財産を預かる以上、他の兄弟姉妹にも納得してもらった上で進めることが大切になります。合意形成にあたり押さえておきたいポイントは次の通りです。
・ 事前に家族会議を開く:
親御さんと子世代全員で顔を合わせ、家族信託を利用する目的や大まかな内容について話し合う機会を持ちましょう。皆が参加する場を設けることで、お互いの考えを共有しやすくなります。
・ 親の意思と気持ちを尊重する:
あくまで親自身の財産管理の話ですので、親御さんの希望や不安を丁寧に聞き取りましょう。
家族信託をすることで親がどのようなメリットを得られるのか、逆にどんな心配があるのかを確認し、本人の意思を尊重して進めることが重要です。
・ 内容の透明性を確保する:
信託契約の内容(受託者は誰か、信託財産や管理方法、亡くなった後の分配方法など)は家族に隠さず共有します。
特に一人の子が受託者になる場合、他の兄弟が内容を知らされていないと不信や誤解を招きかねません。
契約締結後も、受託者は定期的に信託財産の状況を家族に報告するなど透明性を保つと良いでしょう。
・ 専門家に説明してもらう:
家族信託や任意後見といった制度について専門家から客観的に説明してもらうのも効果的です。
司法書士など第三者の立場から制度趣旨や契約内容を説明してもらえば、家族内で共通理解が深まり、安心感にもつながります。
家族全員が同じ方向を向いて協力し合うことで、初めて家族信託の効果が最大限に発揮されます。
親の認知症や相続に備えて家族信託を検討中の方は、ぜひ一度ご家族で話し合いの場を持ってみてください。
必要に応じて弊所にてサポートも受けながら、皆が安心できる形で大切な財産を守る仕組みを整えておきましょう。
家族信託シリーズ第3回:障害のある子どものための家族信託
〖現在の状況〗
◆ 家族構成:父、母、長男、二男(障害あり)
〖ご家族の悩み〗
すでに二男の判断能力が低下した状態で、父が遺言書を遺さずに死亡した場合、遺された相続人たちはどうなるのか?
何の対策もしなかった場合、方法は以下の2つに限られる。
① 二男に成年後見人を付けて、選任された成年後見人が二男の代わりに遺産分割協議に参加する。
※ 但し、法定後見制度の利用となり、二男が死亡するまで毎月3~6万円の後見人報酬が発生する。
② 法定相続分で遺産分割をする。
※ 法定後見の場合、二男の法定相続分を確保しなければなりません。。
〖解決策〗
上記の①②にならないように「受益者連続型信託」の応用パターンを活用する。
〖設計プラン方針〗
経済的負担や柔軟性が乏しい成年後見制度の利用を回避しつつ、障害がある二男の生活を確保する。
〖プラン内容〗
・ 委託者 / 財産を託す人:父
・ 受益者 / 利益を受ける人:父
・ 受託者 / 財産を託される人:長男
父に相続が発生した後、ここで信託を終了させずに(通常は委託者兼受益者が死亡すれば信託終了)、「①父の持つ受益権、②委託者としての地位」を二男に相続させる。
結果、障害があり、すでに意思能力を失っている二男が、父が組成した「家族信託の流れに後から乗ることができる」というもの。
二男は信託メリットを享受することができ、長男は引き続き「二男のために」財産管理をする。
※ 通常、すでに意思能力を失っている二男が信託契約の当事者にはなれないが、組成した契約当事者の「父の受益権」と「委託者としての地位」を相続させられれば、二男も委託者兼受託者になれる。
家族信託シリーズ第2回:親の認知症対策としての家族信託
---この記事では、親の認知症対策として家族信託を活用する方法について解説します。---
親が認知症になったときに生じる財産管理の問題や、家族信託と成年後見制度の違い、そして早めに備えることの大切さがわかります。
親が認知症になると財産管理はどうなる?
高齢の親が認知症になって判断能力が低下すると、銀行口座の管理や不動産の売却など 財産管理 が思うようにできなくなります。
本人が契約や手続きを行えないため、家族であっても勝手に預貯金を動かしたり資産を処分したりできず、いわゆる「資産が凍結される」状態になってしまいます。
こうした場合に備えて利用されるのが成年後見制度ですが、この制度では家庭裁判所を通じて後見人を選任し、本人に代わって財産管理を行います。
後見人には親族が選ばれることもありますが、場合によっては第三者の専門家(弁護士や司法書士など)が選ばれることもあります。
後見人は裁判所の監督下で財産を管理し、毎年その収支を報告する義務があります。
成年後見制度を利用すれば、認知症の親の財産管理は一応可能になります。しかし、後見人が付くと本人の財産処分は非常に制約されます。
例えば、親名義の不動産を売却したり、生前贈与をしたりするには後見人だけでなく裁判所の許可も必要です。
家族が「親のためによかれ」と思う資産の活用や相続税対策(生前贈与など)も、後見開始後は実質的に難しくなってしまいます。
つまり、認知症発症後に後見制度に頼ると、思うような財産活用ができなくなるリスクが高いのです。
家族信託とは?認知症対策としての仕組み
そこで注目されているのが 家族信託 です。家族信託とは、家族間で財産を預けて管理・運用してもらう仕組みのことです。
例えば、認知症対策としては、親御さん(財産を持つ人)が元気なうちに、自分の財産を信頼できる家族(子どもなど)に託して管理してもらう契約を結びます。
信託契約を結ぶと、預けられた財産の名義は受託者(財産を管理する家族)に移りますが、その財産は信託の目的に沿って親のために使われます。
親御さんは引き続き受益者として財産から利益を受け取ることができ、必要な費用を子どもに管理してもらえるのです。
家族信託のメリットは、親の判断能力が低下した後でもスムーズに財産を管理・処分できる点にあります。
信託によって受託者に権限を与えておけば、たとえ親が認知症になっても、不動産の売却や介護費用の捻出などを子どもが柔軟に行えます。
成年後見制度のように都度裁判所の許可を得る必要もなく、親の生活や介護のために資産を有効活用できるのが大きな利点です。
さらに家族信託では、親が亡くなった後の資産承継先も指定しておくことができます。
たとえば「親が亡くなったら信託財産を配偶者や子どもに引き継ぐ」と信託契約に定めておけば、遺言書のような役割も果たします。
これにより、認知症対策と同時に将来的な相続対策にもなり、一石二鳥の制度と言えるでしょう。
家族信託と成年後見制度の違い
成年後見制度と家族信託の大きな違いは、事前対策か事後対策かという点です。
成年後見制度は認知症などで判断能力が失われた「後」で家庭裁判所に申し立てて利用する制度ですが、
家族信託は本人が元気で意思判断ができるうちに「前もって」準備する制度です。
この違いが、財産管理の自由度に大きく影響します。以下に主な違いをまとめます。
こうした違いから、親の財産管理を家族の裁量で行いたい場合は家族信託の方が適していると言えます。
ただし、家族信託は親が十分な判断能力を有する間にしか契約できません。認知症がかなり進行してしまった後では、もはや信託契約を結ぶことはできず、後見制度に頼らざるを得なくなってしまいます。
家族信託を検討する際のポイント
家族信託を活用するには早めの準備が肝心です。 親に認知症の兆候が出る前から、家族で話し合って対策を立てておくことをおすすめします。
信託契約の内容(誰を受託者にするか、どの財産を信託するか、将来の受益者を誰にするか等)を家族でしっかり決める必要がありますので、専門家に相談しながら進めると安心です。
契約内容によっては税金や他の相続対策との関係も出てきますので、総合的に検討することも重要です。
しかし一度仕組みを整えておけば、親御さんが認知症になった後もスムーズに財産管理ができ、親の生活や介護に必要なお金を滞りなく使えるようになります。
結果として、ご家族にとって経済的・精神的な負担の軽減につながるでしょう。
まとめ:認知症対策は「今」がタイミング
親の認知症による財産管理の問題に備えるには、家族信託という方法が有効であることを見てきました。
成年後見制度と比べて事前の手間はありますが、その分、実際に認知症になった際には柔軟で円滑な財産管理が可能になります。
大切なのは「元気なうちに備える」ことです。親御さんやご自身の将来に不安がある方は、ぜひ早めに家族信託の活用を検討してみてください。
認知症になってからではできない対策だからこそ、今のうちに準備を進めておくことが家族の安心につながります。
【連載:家族信託について】第1回:相続対策としての家族信託
はじめに
親の高齢化が進む中、「もしもの時」に備えた相続対策がますます重要になっています。
近年注目を集めているのが 「家族信託」 という仕組みです。
家族信託とは、信頼できる家族に自分の財産の管理や処分を託し、あらかじめ決めた目的に沿って運用・承継してもらう制度のことです。
例えば、「親の判断能力が低下した後も子どもが代わりに財産を管理できるようにしたい」
「自分が亡くなった後、配偶者に財産を残し、その配偶者が亡くなった後は子どもに引き継ぎたい」といった希望を叶えることができます。
本記事(第1回)では、相続対策として家族信託がなぜ注目されているのか、その基本的な仕組みや従来の遺言との違い、具体的な活用の流れ、
そして地域(茅ヶ崎・寒川)の高齢化事情をふまえたニーズや司法書士に依頼するメリットについて、初心者の方にもわかりやすく解説します。
なぜ家族信託が相続対策として注目されているのか
超高齢社会の日本では、認知症などで判断能力が低下する高齢者の増加や、相続をめぐる家族間トラブルが社会問題となっています。
茅ヶ崎市では高齢化率が約27%と4人に1人以上が65歳以上という状況で、寒川町も同程度の高齢者割合(今後30%超とも予想)となっており、親世代の財産管理や相続の備えは地域でも大きな関心事です。
こうした背景から、家族信託は「生前にできる相続対策」として注目されています。
従来、親の財産承継には遺言書を用意するケースが一般的でしたが、遺言はあくまで「亡くなった後」に効力を発揮するものです。
そのため、親が存命中に認知症になった場合には遺言書では財産を動かせず、預貯金の引き出しや不動産の処分ができなくなってしまいます(いわゆる「資産の凍結」状態)。
家族信託を利用すれば、親が元気なうちに信頼できる子どもを受託者(財産を管理する人)に指定し、将来親の判断能力が低下しても子どもが代わりに財産管理・処分できるよう準備しておくことができます。
これは成年後見制度に比べて柔軟で、家族の意思に沿った資産管理ができるため、認知症対策としても有効です。
また、家族信託は相続の争い防止にも寄与します。信託した財産は法律上「受託者名義の信託財産」となるため、委託者(親)が亡くなっても遺産分割協議の対象になりません。
遺言書があっても相続人間で話し合いが必要な場合がありますが、家族信託であらかじめ財産の承継先を定めておけば、指定された受益者にスムーズに財産を引き継ぐことができます。
親御さんとしても「自分の死後、子どもたちに余計な手間や揉め事をかけたくない」というニーズがあり、家族信託はその安心材料となります。
遺言との違いと相続税対策との関係
家族信託と遺言の主な違いを整理してみましょう。
効力の発生時期: 遺言は本人死亡後に効力を発揮しますが、家族信託は契約を結んだ時点(生前)から効力があります。
=つまり生前から財産管理・承継の仕組みを動かせる点が大きな違いです。
判断能力低下への対応: 遺言では本人が認知症などで判断能力が低下してしまうと新たに作成・変更できません。
一方、家族信託は本人が元気なうちに契約しておけば、判断能力低下後もその契約に沿って財産管理が継続されます(後見人を立てる手間も減らせます)。
二次相続の指定: 遺言は基本的に亡くなった時点で誰に遺産を渡すかまでしか決められません。例えば「自分が亡くなったら配偶者へ」という指定までです。
その配偶者が亡くなった後の承継先(次の世代)までは遺言では指定できません。これに対し家族信託なら、「自分 → 配偶者 → 子ども」といった二段構えの承継先まで生前に決めておくことが可能です。
このように家族信託には遺言の機能も含まれており、二次相続以降の資産承継までコントロールできる点が大きな特徴です。
財産承継の手続き: 家族信託では信託財産が遺産分割協議不要で受益者に引き継がれます。
遺言があっても遺留分(法律上保障された最低限の取り分)を侵害する内容の場合、相続人から異議を唱えられる可能性がありますが、家族信託でも遺留分請求は行使され得るので、その点の配慮は必要です。
とはいえ、信託した財産自体は遺言よりも確実に指定受益者へ渡せるため、相続手続きを簡便にする効果があります。
相続税対策との関係性についても触れておきます。家族信託を利用すると名義が受託者(子どもなど)に移るため、「節税になるのでは?」と思われるかもしれません。
しかし結論から言えば、家族信託自体が直接的な相続税の節税対策になるわけではありません。
信託を組成しただけでは相続税評価額が下がったり税負担が軽減されたりする効果は基本的にありません。
たとえば親が受益者(財産から利益を受ける人)である家族信託の場合、親が亡くなれば結局その時点で信託財産は相続税の課税対象となります。
とはいえ、家族信託には間接的に有利な点もあります。
契約の形態によっては贈与税や不動産取得税が生じない形で財産を動かせる(委託者=受益者とすれば贈与とみなされず、信託登記による不動産名義変更でも不動産取得税は非課税)ため、
無用な税コストを増やさずに資産承継の準備ができます。
また、資産が凍結されず計画通り承継できれば、相続発生後に慌てて手続きをしたり財産処分に時間がかかって無駄な費用が発生したりするのを防ぐことができます。
つまり家族信託は節税というより「円滑な相続」のための制度であり、必要に応じて生命保険や生前贈与など他の相続税対策と組み合わせて活用するのが望ましいでしょう。
家族信託を活用する具体的な流れ
「家族信託に興味はあるけれど、実際には何をするの?」という方向けに、大まかな手続きの流れを紹介します。
初めての方でもイメージしやすいよう、ステップごとに整理します。
①家族で目的や方針を話し合う
まずは家族信託を利用する目的を明確にします。
例えば「認知症対策として資産凍結を防ぎたい」
「自分(親)が亡くなった後、配偶者が安心して暮らせるようにし、その配偶者の死後は子どもに財産を承継させたい」
「将来、障がいのある子の生活資金を確保したい」
「田舎の実家や土地を将来空き家にせず有効活用したい」など、ご家庭によって様々なニーズがあるでしょう。
親御さん本人と子世代でしっかり話し合い、どんな財産を誰のためにどう管理・承継したいか希望を共有することが第一歩です。
②信託契約の内容を設計する
次に、家族信託の具体的な設計を行います。信託契約では以下のようなポイントを決めます。
誰が委託者(財産を託す人=通常は親)となり、誰を受託者(財産を管理する人=通常は子ども等)とするか。受益者(財産から利益を受ける人)は誰か。
信託の目的を明確に定める(例:「委託者の介護費用や生活費に充てるため」「委託者死亡後に配偶者の生活保障をするため」など)。
どの財産を信託の対象とするか(現金、不動産、有価証券など具体的に決定)。
受託者にどのような管理・処分権限を与えるか(不動産を売却してよいか、資金をどのように運用するか等の範囲)。
信託契約の期間や終了事由を定める(例えば「委託者が亡くなったら信託終了」など)。終了後、その財産を最終的に誰に引き継ぐか(残余財産の帰属先)も決めておきます。
必要に応じて信託監督人や受益者代理人を置く(受託者の行為をチェックする第三者を設けることで不正防止や公平性確保ができます)。
これらを家族の状況に合わせてオーダーメイドで決めていきます。決める項目が多く難しく感じるかもしれませんが、後述する専門家(司法書士等)に相談すれば適切なプランを提案してもらえます。
③信託契約書の作成
設計した内容をもとに、信託契約書を作成します。
契約書は法律上必ずしも公正証書にする必要はありませんが、後々のトラブル防止や金融機関での信託専用口座の開設手続きのためにも公正証書で作成することが望ましいです。
契約書のひな形はインターネット上にもありますが、各家庭の事情に合わせて細かく調整する必要があります。
条項のミスや抜け漏れがあると意図した効力が得られなくなる可能性もあるため、専門家にチェック・作成してもらうのがおすすめです。
④契約の締結(公正証書化)
内容が固まったら、公証役場で信託契約の公正証書を作成し、契約を正式に締結します。公証人に契約内容を読み上げてもらい、委託者・受託者が署名押印して成立です。
ここから信託がスタートします。
不動産がある場合は名義変更登記
信託財産に不動産が含まれる場合、契約締結後できるだけ早く不動産の信託登記(名義変更)を行います。
具体的には、委託者から受託者への名義変更を法務局に申請し、登記簿上に「〇〇信託」といった形で信託が設定されたことを明記します。
この登記をしておくことで、後々第三者にも信託の効力を主張でき、不動産売却時などの手続きもスムーズになります。
信託専用の銀行口座を開設
信託財産に預貯金が含まれる場合、受託者は自分の財産と信託財産を分けて管理する義務があります。
そのため、信託契約にもとづいた信託専用口座(信託口口座)を銀行で開設します。
口座名義は「委託者〇〇・受託者〇〇・信託口」といった形式になり、受託者が信託財産を管理・運用するための専用口座です。
最近は信託口口座に対応する金融機関も増えていますが、万一難しい場合は銀行に相談し、通常の受託者名義口座を信託専用として扱う方法もあります。
以上が基本的な流れです。
契約成立後は、受託者(子ども)が契約内容に従って親の財産を管理・運用します。
必要に応じて不動産を売却して介護費用に充てたり、信託専用口座から親の施設利用料を支払ったりしていきます。
信託期間が終了(例えば親が亡くなった時)したら、契約で定めた受益者や残余財産受取人に財産を引き継いで完了です。
茅ヶ崎・寒川地域の高齢化事情と家族信託の具体的ニーズ
茅ヶ崎市や寒川町といった地域では、高齢者の割合が高く、今後も一人暮らしの高齢者や認知症患者の増加が見込まれます。
そうした地域事情をふまえると、家族信託には次のような具体的ニーズがあります。
認知症による資産凍結の防止: 親が認知症を発症すると、銀行口座の凍結や不動産の売却が自由にできなくなり、介護費用の捻出や資産処分が滞る恐れがあります。
茅ヶ崎・寒川エリアでも、高齢の親を抱える子世代にとって「いざという時に備えたい」という声は多く、家族信託で早めに資産管理のバトンタッチをしておくことに大きなメリットがあります。
空き家対策・実家の処分: 親が介護施設に入ったり亡くなったりして実家が空き家になるケースが増えています。
この地域でも空き家問題は深刻化しつつあり、放置すれば固定資産税の負担や防犯・景観上の問題も生じます。
家族信託を活用しておけば、受託者である子どもがタイミングを見て実家を売却したり賃貸に出したりと柔軟に処分・活用できます。
信託契約で売却益の使途(親の介護費や維持管理費など)も定められるため、親の生活を支えつつ資産を有効活用することが可能です。
二次相続への備え: 茅ヶ崎や寒川には長年地域に住み続けるご夫婦も多く、「自宅や土地を自分たちの死後は子どもに確実に残したい」という希望もよく聞かれます。
特に子ども世代が複数いる場合、誰が実家を引き継ぐか、他の子には代わりに何を渡すかなどを巡って揉めるリスクもあります。
家族信託であれば、配偶者が亡くなった後の承継先(長男に不動産、次男に預金…など)まで明記できるため、将来の相続争いを未然に防ぎ、公平な分割を実現しやすくなります。
親の想いの実現: 高齢化が進む地域では、介護や障がいを抱える家族の話題も避けられません。
「亡くなった後も障がいのある娘の生活を保障したい」「孫の代まで学費の一部を援助したい」といった親御さんの想いを叶える手段としても、家族信託は活用されています。
このようなケースでは信託契約に給付の条件や期間を定め、親亡き後も受託者が定期的に支援を行う仕組みにすることが可能です。
以上のように、茅ヶ崎・寒川といった高齢者の多い地域では、家族信託が「備えあれば憂いなし」の安心策として具体的な効果を発揮します。
子世代にとっても、親の財産について早めに話し合っておくきっかけとなり、いざという時に慌てずに済むという利点があります。
おわりに
家族信託は、親世代・子世代双方にとって新しい相続対策の選択肢として広がりつつあります。
従来の遺言や成年後見制度では対応しきれなかった課題に柔軟に対処でき、財産の管理・承継を家族の希望通りにデザインできる点が大きな魅力です。
一方で、制度が新しく専門知識も要するため、メリット・デメリットを正しく理解した上で進めることが大切です。
この記事では相続対策としての家族信託の概要を解説しました。最後までお読みいただきありがとうございます。
次回(第2回)は「認知症リスクに備える家族信託」をテーマに、認知症対策として家族信託を活用するポイントを詳しく紹介します。
親御さんの将来に不安を感じている方は、ぜひ引き続きご覧ください。備えを万全にして、安心できる相続・財産管理を実現していきましょう。


