相続手続きをまとめて任せる「遺産整理業務」とは?銀行等との費用・違いを司法書士が解説

2026.09.15

「親が亡くなったが、銀行・証券会社・不動産の手続きをどこから始めればよいか分からない」

「仕事を休んで、平日に何度も窓口へ行くのが難しい」

「相続人が遠方に住んでいるため、書類のやり取りだけでも時間がかかる」

相続では、戸籍の収集、不動産の相続登記、預貯金の解約、証券口座の移管など、複数の窓口で手続を進めることがあります。

日本司法書士会連合会の相続情報サイトも、窓口が多数に分かれること、平日の日中の対応が多いこと、必要書類や期限があることを、相続手続が複雑になりやすい理由として挙げています。

こうした相続手続を、委任内容に応じてまとめて支援するのが「遺産整理業務」または「遺産承継業務」です。

今回は、遺産整理業務で依頼できること、司法書士だけでは対応できないこと、銀行等のサービスとの費用・役割の違い、相談前に準備したい資料を解説します。

遺産整理業務の内容と銀行等との費用の違いを解説する司法書士木村光太朗

遺産整理業務とは

「遺産整理業務」は、法律で一律に内容が決められた一つの手続名ではありません。

依頼者様との委任契約に基づき、相続関係や財産の状況を整理し、預貯金・有価証券・不動産などの承継手続をまとめて進めるサービスの総称として使われています。

対応範囲は、事務所や金融機関、相続財産の内容によって異なります。

そのため、名称だけで比べるのではなく、「どこまで料金に含まれるか」「何が別料金か」「誰が実際の手続を担当するか」を確認することが重要です。

遺産整理業務の主な流れ

当事務所での具体的な受任範囲は個別に確認しますが、一般的には次の順序で整理します。

1.遺言書と期限の確認

最初に、公正証書遺言、自宅で保管されていた自筆証書遺言、法務局に保管されている自筆証書遺言の有無を確認します。

相続放棄を検討する場合、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に家庭裁判所へ申述する必要があります。

また、相続税の申告が必要な場合、原則として死亡を知った日の翌日から10か月以内が期限です。

遺産整理を依頼するかどうかを考える前に、まず期限を過ぎる可能性がないかを確認します。

2.相続人の確認

亡くなった方の出生から死亡までの戸籍などを収集し、法律上の相続人を確認します。

必要に応じて「法定相続情報一覧図」を作成して法務局へ申し出ると、その写しを不動産、預貯金など複数の相続手続で利用できます。

戸籍の束を各窓口へ繰り返し提出する負担を減らし、手続を並行して進めやすくなる場合があります。

3.相続財産と債務の整理

固定資産税の納税通知書、通帳、残高証明書、証券会社からの通知、保険関係書類、借入れに関する資料などを基に、財産と債務を整理します。

資料にない財産まで必ず発見できるわけではありません。郵便物、メール、確定申告書、取引履歴なども手掛かりにしながら、調査する範囲と方法を依頼者と確認します。

4.分け方を相続人全員で決める

遺言書がなく、相続人が複数いる場合は、誰がどの財産を取得するかを相続人全員で協議します。

司法書士は、合意内容に基づく遺産分割協議書の作成や登記手続を支援できますが、相続人間の対立について一方の代理人として交渉することはできません。

話合いがまとまらない、使途不明金や遺留分などについて争いがある場合は、弁護士への相談が必要です。

遺産分割調停・審判など家庭裁判所の手続が必要になることもあります。

5.預貯金・証券・不動産などの承継手続

合意内容が固まった後、金融機関ごとの書類を整え、預貯金の解約・払戻し、証券口座の移管などを進めます。

不動産がある場合は、司法書士が相続登記を申請します。

金融機関によって書式や必要書類が異なり、同じ戸籍や印鑑証明書でも有効期限の扱いが異なることがあります。

全体の順序を組み、書類の取得回数を抑えることが、遺産整理業務を依頼するメリットの一つです。

6.相続人への引渡しと完了報告

各手続が完了したら、預り金や承継した財産を合意内容に沿って引き渡し、処理した手続と預り書類を報告します。

実際の方法は契約内容や金融機関の取扱いによって異なります。
 

司法書士にまとめて相談するメリット

相続登記と金融資産の手続を分断しにくい

相続財産に不動産が含まれる場合、相続登記は司法書士の中心的な業務です。

戸籍や遺産分割協議書を、不動産と金融資産の双方を見据えて準備できます。

担当者へ直接相談できる

当事務所では、相談内容と資料を確認したうえで、受任する範囲と見積りを事前にご説明します。

途中で税理士、弁護士、不動産会社などの関与が必要になった場合も、何を誰に相談すべきかを整理します。

必要な手続だけを選べる

「預貯金だけを依頼したい」「戸籍と法定相続情報一覧図まで頼みたい」「不動産を含めて全体を整理したい」など、状況によって必要な範囲は異なります。

すでに終わっている手続を重ねて依頼する必要はありません。

司法書士だけでは対応できないこと

遺産整理業務を「相続に関することを何でも代理できるサービス」と捉えるのは正確ではありません。

  • 相続人同士で争いがある場合の代理交渉:弁護士の業務

  • 相続税申告、税額計算、税務判断:税理士の業務

  • 不動産の売却仲介や査定:宅地建物取引業者等の業務

  • 家庭裁判所での調停・審判における代理:原則として弁護士の業務

司法書士は裁判所提出書類の作成を支援できますが、代理できる範囲とは別です。

案件ごとに専門家の役割を分ける必要があります。

銀行等へ依頼する場合との違い

遺産整理業務は、銀行・信託銀行なども提供しています。

安心感、支店網、金融資産に関する窓口の集約などは金融機関の強みです。

一方で、料金体系や別途費用はサービスごとに違います。

2026年9月15日に確認した公開料金の一例では、ある大手銀行の一般的な相続手続代行サービスは、対象財産の額に応じた料率制で、最低手数料を110万円(税込)としています。

不動産の相続登記に必要な登録免許税・司法書士報酬や、相続税申告に必要な税理士報酬などは別途負担です。

同じ金融機関には、相続人5人以下、財産・取引金融機関数などの条件をすべて満たす場合に55万円(税込)となる別プランもあります。

一方、当事務所の料金表では、預貯金や株式口座に関する遺産承継業務について、財産額3,000万円の例を60万5,000円(税込)としています。

「司法書士なら銀行より必ず安い」と結論づけることはできません。対象財産、相続人数、金融機関数、不動産登記を含むか、財産の評価方法、実費、他士業の報酬が同じではないからです。

ただし、一般プランの最低手数料と比べると、司法書士に依頼された方が費用を抑えられるケースがあります。

また、司法書士へ直接依頼することで、相続登記を含めた法的手続の担当者が明確になる点も比較材料です。

依頼先を決めるときは、総額だけでなく、同じ前提条件で書面の見積りを取り、業務範囲と追加費用を比較してください。

初回相談でお持ちいただきたい資料

全てそろっていなくても相談できます。手元にあるものだけで構いません。

  • 遺言書、遺言書保管事実証明書など

  • 亡くなった方と相続人の戸籍、住民票など

  • 固定資産税の納税通知書、権利証、登記事項証明書

  • 通帳、キャッシュカード、銀行からの郵便物

  • 証券会社・保険会社からの通知

  • 借入れ、住宅ローン、未払金に関する資料

  • 相続人の氏名、住所、連絡先をまとめたメモ

相続放棄を検討している場合や、借金の有無が分からない場合は、財産を処分する前に早めにご相談ください。

まとめ

遺産整理業務は、戸籍の収集、相続人・財産の整理、預貯金や証券の承継、不動産の相続登記などを、委任範囲に応じてまとめて進めるサービスです。

銀行等にも同様のサービスがありますが、料金体系、利用条件、別途費用、実際の担当範囲は異なります。

「どこが一番安いか」だけではなく、自分の相続で必要な手続が見積りに含まれているかを確認することが大切です。

木村光太朗司法書士事務所では、まず相続財産と必要な手続を整理し、当事務所で対応する範囲と費用をご説明します。

相続人間の争いや税務など、別の専門家が必要な内容は区別してご案内します。

茅ヶ崎市、藤沢市、寒川町、平塚市周辺で、「相続手続をまとめて相談したい」「平日に何度も窓口へ行けない」とお困りの方は、資料がそろっていない段階でもご相談ください。

FAQ

Q1.預貯金や証券口座だけでも依頼できますか?

はい。対応できる範囲は金融機関・証券会社や口座の状況によりますが、必要な部分だけを依頼できる場合があります。

初回相談時に、すでに済んでいる手続と残っている手続を確認します。

Q2.相続人全員の同意がなくても進められますか?

遺産分割が必要な場合、原則として相続人全員の合意が必要です。

一部の相続人を除いて分け方を決めることはできません。

連絡が取れない相続人がいる場合は、家庭裁判所の手続が必要になることがあります。

Q3.相続人同士でもめている場合も司法書士へ任せられますか?

司法書士が一方の相続人を代理して、相手方と遺産分割の交渉をすることはできません。

争いがある場合は弁護士へつなぎ、司法書士は必要に応じて登記や裁判所提出書類の作成など、対応できる範囲を担当します。

Q4.相続税の申告も料金に含まれますか?

相続税の申告・税務判断は税理士の業務で、司法書士の報酬には通常含まれません。

申告の可能性がある場合は税理士への相談を案内します。

相続税の申告期限は、原則として死亡を知った日の翌日から10か月以内です。

Q5.銀行に依頼するより安いですか?

一般的な銀行の料率制サービスと比べて費用を抑えられるケースはありますが、必ず安いとは限りません。

金融機関には条件付きの定額プランもあり、業務範囲や別途費用も異なります。

同じ条件で見積りを比較してください。

Q6.遠方に相続人や財産があっても相談できますか?

可能な場合があります。戸籍収集や書類の授受は郵送で進められることもあります。

不動産、金融機関、相続人の所在地と、現地対応が必要な手続の有無を確認してご案内します。

Q7.最初の相談までに書類を全て集める必要がありますか?

いいえ。手元にある通帳、固定資産税の通知、証券会社からの郵便物、遺言書などをお持ちください。

資料が不足している場合は、何をどの順番で集めるかから整理します。

出典・参考資料

公開日・最終更新日:2026年9月15日
執筆・監修:司法書士 木村光太朗(木村光太朗司法書士事務所)