相続土地国庫帰属制度は実際に使える?国庫帰属3,008件―2026年最新統計を司法書士が解説

2026.08.31

「親から相続した山林が遠方にあり、管理に行けない」

「使う予定のない農地や空き地を、子どもに残したくない」

このような悩みを抱えている方にとって、相続した土地を国に引き渡すことができる「相続土地国庫帰属制度」は、有力な選択肢の一つです。

法務省は2026年8月21日、同制度に関する最新の統計を公表しました。

今回は、2026年7月31日現在の統計を基に、実際の利用状況、申請できる土地の条件、必要な費用、司法書士が支援できる範囲を解説します。

相続土地国庫帰属制度の2026年最新統計を解説する司法書士木村光太朗と相続した土地のイメージ

相続土地国庫帰属制度とは

相続土地国庫帰属制度は、相続または相続人に対する遺贈によって取得した土地について、一定の条件を満たした場合に、所有権を国庫へ帰属させる制度です。

相続放棄とは異なり、預貯金や自宅などの財産を相続しながら、利用予定のない特定の土地について国庫帰属を検討できる点が特徴です。

ただし、申請すれば必ず国が引き取ってくれる制度ではありません。法令上の要件を満たし、法務局による書面審査や実地調査を経て承認される必要があります。

最新統計では国庫帰属が3,008件

法務省の統計によると、2026年7月31日現在の状況は次のとおりです。

  • 申請件数:5,863件
  • 国庫に帰属した件数:3,008件
  • 却下件数:85件
  • 不承認件数:96件
  • 取下げ件数:1,102件

国庫に帰属した土地の内訳は、宅地1,115件、農用地964件、森林199件、その他730件です。

一方、取下げ1,102件のうち571件は、自治体や隣接地所有者などから土地を有効利用できる見込みが示されたことによるものです。

制度の検討過程で、売却、隣接地所有者への譲渡、自治体等による活用といった別の解決方法が見つかる場合もあることが分かります。

なお、3,008件を申請総数5,863件で割った数字を、そのまま「承認率」と捉えることはできません。申請総数には審査中の案件や取下げられた案件も含まれるためです。

申請できる人

原則として、相続または相続人に対する遺贈によって土地を取得した所有者が申請できます。

土地が共有の場合は、共有者全員で共同申請する必要があります。

共有者のうち少なくとも一人が相続等によって持分を取得している場合には、他の共有者が売買などで持分を取得していても、一定の条件の下で共同申請できることがあります。

一方、土地を単独で購入した人が「使わなくなった」という理由だけで申請することはできません。

国庫帰属が難しい土地

次のような土地は、申請段階で却下されたり、審査の結果として不承認となったりする可能性があります。

  • 建物がある土地
  • 抵当権などの担保権や使用収益権が設定されている土地
  • 通路、墓地、境内地など、他人による使用が予定されている土地
  • 土壌汚染がある土地
  • 境界が明らかでない土地
  • 所有権の範囲について争いがある土地
  • 地上または地下に、管理や処分を妨げる物がある土地
  • 危険な崖があるなど、通常より多くの管理費用を要する土地

例えば、古い家屋が残っている場合は、そのままでは申請できません。

建物を取り壊したとしても、境界や埋設物など、ほかの要件について改めて確認する必要があります。

申請に必要な費用

申請時には、土地1筆につき1万4,000円の審査手数料が必要です。

審査手数料は、申請を取り下げた場合や不承認となった場合でも原則として返還されません。

さらに、承認を受けた後には、国による10年分の管理費用に相当する負担金を納付します。

負担金は20万円を基準とする土地もありますが、市街地の宅地、農用地、森林などは、土地の種類や面積に応じて金額が増える場合があります。

建物の解体、境界の確認、残置物の撤去などが必要な場合は、それらの費用も別途考えなければなりません。

まず国庫帰属だけに決めないことが重要

利用予定のない土地であっても、最初から国庫帰属だけに絞る必要はありません。

申請前に、次の可能性を比較することが大切です。

  1. 一般の不動産市場で売却できないか
  2. 隣接地の所有者に譲渡できないか
  3. 地元の自治体や地域団体が活用できないか
  4. 農地であれば農業委員会等への相談が必要ではないか
  5. 国庫帰属の要件と費用を満たせるか

法務局への事前相談を利用するときも、登記事項証明書、公図、地積測量図、現地写真、固定資産税の納税通知書などを準備しておくと、相談を進めやすくなります。

司法書士に相談できること

司法書士は、相続土地国庫帰属制度の申請書や添付書類の作成を業務として行うことができます。

また、相続関係や共有関係の確認、相続登記、登記記録と公図の確認などは、制度の利用を検討するうえで重要な準備となります。

ただし、国庫帰属の申請そのものを、司法書士が通常の代理人として行うことはできません。申請者本人または法定代理人が申請する制度であることには注意が必要です。

当事務所では、次のような点を整理しながら、制度を利用できる可能性を検討します。

  • 誰が土地を相続しているか
  • 相続登記や共有者の整理が必要か
  • 登記記録と現地の状況に違いがないか
  • 国庫帰属以外の方法と比較すべきか
  • 申請書や添付書類をどのように準備するか

測量、建物解体、売却、税務など他分野の確認が必要な場合には、必要な相談先を含めて整理します。

まとめ

2026年7月末までに、相続土地国庫帰属制度を利用して3,008件の土地が国庫に帰属しています。

制度が実際に利用されていることは確かですが、土地の状態、境界、権利関係、管理上の負担などによっては利用できません。

申請手数料や負担金に加え、申請前の整備費用が必要になる場合もあります。

相続した土地を「使わないからすぐ国へ」と考えるのではなく、登記と現地の状況を確認し、売却や譲渡などの可能性も含めて比較することが大切です。

茅ヶ崎市、藤沢市、寒川町、平塚市周辺で、相続した土地や相続登記についてお困りの方は、木村光太朗司法書士事務所へご相談ください。

土地が遠方にある場合も、まずは資料を基に必要な手続きを整理します。


FAQ

Q1.建物が残っている土地でも申請できますか?

建物がある土地は申請できません。建物を取り壊した後も、境界、担保権、埋設物など、ほかの要件を満たす必要があります。

Q2.自分で購入した土地を国に引き取ってもらえますか?

購入によって取得した土地だけでは、原則として申請できません。相続または相続人に対する遺贈によって取得した土地が対象です。

Q3.共有名義の土地でも利用できますか?

利用できる可能性はありますが、共有者全員による共同申請が必要です。共有者の所在や相続関係を先に整理しなければならない場合があります。

Q4.申請すれば必ず承認されますか?

必ず承認されるわけではありません。書面審査や実地調査が行われ、却下、不承認または取下げとなる場合があります。

Q5.司法書士にすべて任せられますか?

司法書士は申請書や添付書類の作成、相続登記、権利関係の整理などを行えます。ただし、国庫帰属の申請自体は、原則として所有者本人または法定代理人が行います。

Q6.最初に何を準備すればよいですか?

登記事項証明書、公図、地積測量図、現地写真、固定資産税の納税通知書などがあると、土地の状況を整理しやすくなります。

相続した土地や相続登記についてのご相談は、当事務所の「お問い合わせフォーム」からご連絡ください。

出典

公開日・最終更新日:2026年8月31日
執筆・監修:司法書士 木村光太朗(木村光太朗司法書士事務所)