【2026年法改正】成年後見制度は廃止される?「後見・保佐」の見直しを司法書士が解説

2026.08.25

茅ヶ崎・湘南エリアの皆様、こんにちは。

JR茅ヶ崎駅から徒歩3分の木村光太朗司法書士事務所、代表司法書士の木村光太朗です。

2026年6月、成年後見制度を大きく見直す改正法が成立しました。

「成年後見制度が廃止されるらしい」

「今ついている成年後見人はどうなるのか」

このような疑問や不安をお持ちの方もいらっしゃると思います。

結論からお伝えすると、成年後見制度そのものがなくなるわけではありません。

今回廃止されるのは、成人を対象とする現行の法定後見制度のうち、「後見」と「保佐」という類型です。

今後は、本人に必要な支援だけを個別に設定する「補助」の制度を中心とした仕組みに再編されます。

ただし、2026年8月25日現在、この改正はまだ施行されていません。現在は、これまでどおり後見・保佐・補助の3類型が利用されています。


成年後見制度の2026年法改正を解説する司法書士木村光太朗.png

■ 1.成年後見制度は本当に廃止される?

「成年後見制度が廃止される」という説明は、正確ではありません。

認知症、知的障害、精神障害などによって判断能力が不十分な方を、契約や財産管理の面から法的に支える制度は今後も続きます。

変わるのは、支援の内容を決める方法です。

現在の法定後見制度は、本人の判断能力の程度に応じて、次の3類型に分かれています。

・後見:判断能力を欠いているのが通常の状態
・保佐:判断能力が著しく不十分な状態
・補助:判断能力が不十分な状態

改正後は、このうち成人を対象とする「後見」と「保佐」が廃止され、判断能力が不十分な方を広く「補助」の対象とします。

ただし、現在の補助制度に名前だけを統一するわけではありません。本人の状態と実際に必要な支援に応じて、家庭裁判所が権限を個別に定める新しい制度へ再編されます。

成年後見制度の現在の基本的な仕組みについては、以前の記事「成年後見人シリーズ~入門編」でも解説しています。
 

■ 2.2026年の法改正で何が変わる?

今回の改正で特に重要なのは、次の4点です。

① 必要な行為に限って権限を付与する

現行の成年後見人には、本人の財産に関する広い代理権や取消権が認められています。

本人を保護するうえで必要な仕組みである一方、実際に支援が必要な範囲を超えて、本人の自己決定を制限してしまうのではないかという指摘もありました。

改正後は、例えば次のような行為のうち、本人に必要なものを家庭裁判所が個別に定めます。

・預貯金の払戻し
・不動産の売却
・施設入所や福祉サービスの契約
・借入れや保証
・遺産分割や相続放棄
・本人に代わって行う特定の法律行為

「判断能力の程度だけで一律に広い権限を与える」のではなく、「本人が何に困っているのか」を出発点として支援内容を決める方向へ変わります。

② 判断能力を欠く方には「特定補助人」を選任できる

判断能力を欠くことが通常の状態にある方については、「特定補助人」を付ける制度が新設されます。

特定補助人には、法律で定められた重要な財産上の行為についての取消権、本人に対する意思表示を受け取る権限、財産の保存行為を行う権限などが認められます。

そのほかに必要な代理権がある場合は、家庭裁判所が特定の法律行為について代理権を付与します。

つまり、重い認知症などによって判断能力を欠く方への保護がなくなるわけではありません。

従来の成年後見人が持っていた包括的な権限をそのまま与えるのではなく、本人の保護に必要な権限を組み合わせる仕組みになります。

③ 支援が必要なくなれば終了できる

現行制度には、一度利用を始めると、本人の判断能力が回復しない限り原則として終了できないという課題があります。

例えば、不動産の売却や遺産分割のために制度を利用した場合でも、その手続きが終わったという理由だけでは後見制度を終了できません。

改正後は、付与された同意権、取消権、代理権などについて、必要がなくなったと家庭裁判所が認めた場合、全部または一部を取り消せるようになります。

すべての権限が不要になった場合には、補助開始の審判自体を取り消す仕組みも設けられます。

ただし、手続きが終われば自動的に終了するわけではありません。終了や権限の変更には、家庭裁判所の判断が必要です。

④ 本人の意向の把握と尊重が明文化される

改正法では、補助人が本人に情報を提供し、本人の話を聴くなどの適切な方法によって、その意向を把握することが明記されました。

補助人は、把握した本人の意向を尊重し、心身の状態や生活状況にも配慮しなければなりません。

また、本人の利益のために特に必要がある場合には、不正行為や著しい任務違反がなくても、家庭裁判所が補助人を解任できる規定が設けられます。

これは、本人と支援者との関係や支援の質を、より重視する方向への見直しといえます。

もっとも、本人や家族が希望すれば必ず補助人を交代できるという意味ではありません。

最終的には家庭裁判所が、本人の利益を基準として判断します。
 

■ 3.現在、成年後見人や保佐人がついている場合はどうなる?

すでに後見開始または保佐開始の審判を受けている方の制度が、改正法の施行と同時に自動終了することはありません。

既存の成年被後見人、成年後見人、被保佐人、保佐人については、改正法の附則により、原則としてこれまでの制度が引き続き適用されます。

したがって、施行日に一斉に「補助」へ切り替わるわけでも、現在の後見人等の権限が突然なくなるわけでもありません。

一方、改正法の施行後は、既存の後見・保佐から新しい補助制度へ移行するための申立てや、従来の後見・保佐を取り消すための手続きも可能になります。

実際に移行した方がよいかは、本人の判断能力、現在行っている財産管理、必要な代理権、本人と後見人等との関係などを確認して、個別に判断する必要があります。
 

■ 4.改正法はいつから施行される?

成年後見制度に関する改正は、2026年6月24日の公布日から2年6か月以内に、政令で定める日から施行されます。

遅くとも2028年12月頃までには施行される予定ですが、2026年8月25日現在、具体的な施行日はまだ決まっていません。

申立書の様式、家庭裁判所における具体的な審理方法、権限の設定や見直しに関する実務運用などについては、今後公表される政令、省令、裁判所の案内等を確認する必要があります。

施行日などの新しい情報が公表された場合は、当事務所のブログでも改めて解説します。
 

■ 5.制度の改正を待ってから申立てをした方がよい?

現在すでに次のような問題が生じている場合は、改正法の施行を待つべきとは限りません。

・親の預貯金を動かせず、施設費や医療費を支払えない
・判断能力が低下した本人名義の不動産を売却する必要がある
・遺産分割協議に参加できない相続人がいる
・訪問販売や詐欺的な契約を繰り返している
・本人名義の契約や財産管理が止まっている

現在の法定後見制度にも、本人の財産や生活を守るための重要な役割があります。

制度が将来変わるという理由だけで必要な申立てを先延ばしにすると、支払い、契約、相続、不動産売却などの手続きが進まなくなる可能性があります。

まずは「誰が、何の手続きで困っているのか」を整理し、現在の制度を利用する必要があるかを検討することが大切です。
 

■ 6.本人や家族が今から準備できること

今回の改正では、本人に必要な支援を具体的に示すことが、これまで以上に重要になります。

ご家族で、次の内容を整理しておくことをおすすめします。

・本人が自分でできること
・家族の手助けがあればできること
・法律上の代理権がなければ進められないこと
・管理が必要な預貯金、不動産、保険、事業など
・施設入所や今後の生活についての本人の希望
・支援を任せたい人と、任せたくない人
・親族、福祉関係者、医療関係者による支援体制

本人に十分な判断能力がある段階であれば、任意後見契約、財産管理契約、遺言、死後事務委任などを組み合わせて将来に備える方法もあります。

任意後見については「茅ヶ崎の個人事業主が『元気なうち』に結ぶ、任意後見契約の作り方」も参考にしてください。
 

■ よくある質問

Q.成年後見制度は完全になくなるのですか?

いいえ。判断能力が不十分な方を法的に支援する制度は残ります。成人を対象とする現行の「後見」「保佐」が廃止され、新しい補助制度を中心とする仕組みに再編されます。

Q.現在の成年後見人は自動的に解任されますか?

いいえ。現在利用中の後見・保佐は、原則として施行後も従来の制度が適用されます。自動的な終了や一斉の切替えはありません。

Q.2026年8月現在、新しい補助制度を利用できますか?

まだ利用できません。具体的な施行日は今後、政令で定められます。それまでは現行の後見・保佐・補助の制度が適用されます。

Q.制度が変わるまで申立てを待つべきですか?

現在すでに財産管理や契約上の問題が発生している場合、待つことで本人に不利益が生じる可能性があります。

現在の制度を利用すべきか、個別に検討することをおすすめします。
 

■ まとめ――制度の名前より「本人に何が必要か」

今回の法改正は、単に「後見・保佐」という名称をなくすだけの改正ではありません。

本人にどのような支援が必要なのかを具体的に考え、必要な範囲に限って法的な権限を設定する方向への大きな転換です。

私は成年後見実務に継続的に携わる司法書士として、今回の改正で最も重要なのは、制度を利用する本人の意向と生活を中心に支援を組み立てることだと考えています。

一方で、必要な代理権を申立ての段階でどこまで予測できるのか、緊急時に迅速な対応ができるのかなど、今後の実務運用を注視すべき課題もあります。

「現在の後見制度を利用した方がよいのか分からない」

「親に成年後見人がついているが、改正後どうなるのか知りたい」

「任意後見と法定後見のどちらを検討すべきか迷っている」

このような段階でも構いません。ご本人とご家族の状況を整理したうえで、必要な手続きを一緒に検討いたします。

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木村光太朗司法書士事務所
司法書士 木村光太朗

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【参考資料】

法務省「民法等の一部を改正する法律(成年後見及び遺言の制度の見直し)」
参議院「民法等の一部を改正する法律案・議案要旨」
衆議院「民法等の一部を改正する法律案・法律本文」

※本記事は2026年8月25日現在の法令及び公表資料に基づいています。
今後の政令、省令、裁判所の運用等により、手続きの詳細が変更される可能性があります。

執筆:司法書士 木村光太朗