茅ヶ崎の司法書士が解説!おひとりさまの終活と死後事務委任契約

    2026年1月28日
    • 生前相続のご準備

    「終活」とは、人生の最後に向けて身辺整理や手続きを進めることです。
    特に家族がいない「おひとりさま」にとっては、葬儀の希望や遺品整理を自分一人で進める終活が重要です。
    茅ヶ崎で暮らすシニア世代の皆さんも、自分の最期に備えて安心できる準備を考えてみましょう。

    おひとりさまにとって、終活とは自分の最期を安心して迎える準備です。
    例えば茅ヶ崎にお住まいの方も、自宅や財産、葬儀の希望を一人で決めることは多くあります。
    エンディングノートや遺言書で希望をまとめるほか、死後事務委任契約で葬儀や遺品整理を任せる相手を決めておくと安心です。

    こうした準備をしておけば、万が一のときも慌てずに済みます。

    おひとりさまの終活とは

    おひとりさまは「家族や近くに頼れる親族がいない人」のこと。
    家族がいないため、終活で以下のような点を工夫すると安心です:

    • エンディングノートで自分の希望や連絡先を書き残す

    • 財産・保険・年金の情報を整理しておく

    • 遺言書の作成で相続や財産配分を明確にする

    • 葬儀の希望(方式や場所)を決めておく

    • 死後事務委任契約で葬儀などを任せる人を決めておく

    以上の準備により、おひとりさまでも安心して老後を過ごすことができます。

    死後事務委任契約とは

    死後事務委任契約とは、自分が亡くなった後に発生する手続きや事務を、信頼できる第三者に事前に任せておく生前契約のことです。
    葬儀の手配から行政手続き、遺品整理や自宅の片付けまで、幅広い事項を指定できます。

    死後事務委任契約でできること

    • 葬儀やお墓の手配(式の形式・埋葬方法)

    • 死亡届の提出、年金停止、健康保険証・免許証の返納

    • 自宅・賃貸の整理(賃貸物件の明渡し・片付け)

    • 公共料金やクレジットカードの解約・支払い整理

    • 遺品整理(関係者への連絡含む)

    • ペットの世話(引き取り先の確保)

    これらの事務をまとめておくことで、万が一の場合でも家族や友人に迷惑をかけず、本人の希望通りに手続きを進められます。

    死後事務委任契約のポイント

    契約相手選びが重要:信頼できる知人や司法書士に依頼しましょう。
    公正証書で作成しておくと、手続きが円滑になります。
    ※ 原則として、任意後見契約を一緒に締結しましょう。
    ※ 遺言では指定できない事柄(葬儀の方法、ペットの処遇)も契約で定められるので、終活の総仕上げとして検討できます。

    最後に、終活では早めの対策が肝心です。
    茅ヶ崎の司法書士として、分からないことはお気軽にご相談ください。
    適切に手続きを進め、安心して未来を迎えましょう。

    相続税対策の基礎と年末にできる節税ポイント

    2025年12月19日
    • 生前相続のご準備

    相続税は一定の基礎控除があるため、すべての相続に課税されるわけではありません。

    ただし、準備を怠ると後で高額な税負担が発生する場合があります。

    年末は相続税対策を考えるのに最適なタイミングです。

    ここでは相続税の基本的な仕組みと、年末にできる節税ポイントをご紹介します。

    ◎ 相続税の基礎控除を知ろう

     相続税には「3,000万円+600万円 × 法定相続人の数」という基礎控除があり、この範囲内であれば課税されません。

    • 例)相続人が配偶者と子ども2人の計3人なら、基礎控除は3,000万円+600万円×3人=4,800万円となります。

    • 財産の評価額が基礎控除を超えた場合、その超えた部分に対して相続税が課税されます。

     相続税の申告・納付期限は被相続人の死亡から10か月以内

     この期限を過ぎると延滞税や加算税が発生するため、年末には財産と相続人の確認を進めておきましょう。

    ◎ 配偶者の税額軽減を活用しよう

     配偶者には大きな税額軽減が用意されています。

    • 配偶者が相続する財産のうち法定相続分または1億6,000万円のいずれか多い方までは相続税がかかりません。

    • 配偶者が全財産を相続すれば理論上課税されませんが、その分子どもが後に相続する際に税負担が大きくなることもあるため、配分は慎重に考える必要があります。

    ◎ 小規模宅地等の特例で土地の税負担を下げる

     自宅や事業用の土地は相続税評価額が高くなりがちですが、条件を満たせば「小規模宅地等の特例」により評価額の大幅な減額が可能です。

    • たとえば自宅の土地(居住用宅地)は330㎡まで最大80%減額。

    • 事業用宅地は400㎡まで最大80%減額。

    • 地主業や賃貸物件の場合も適用範囲があります。
      この特例は相続税の申告時に選択する制度なので、適用条件や手続きを前もって確認しておきましょう。

    ◎ 生命保険の非課税枠を活用する

     生命保険金には非課税枠があります。

    • 非課税となる金額は、受取人が法定相続人の場合、「500万円 × 法定相続人の数」。

    • たとえば相続人が3人なら1,500万円まで非課税となり、それを超える部分が課税対象になります。
      生命保険は現金で支払われるため、相続税の納税資金にもなります。年末に保険契約の内容や受取人を見直し、非課税枠を有効活用できるかチェックしておくと安心です。

    ◎ 贈与を活用して生前に資産を渡す

     相続税対策として、毎年少しずつ資産を贈与する方法があります。

    • 暦年贈与の基礎控除は年間110万円。この範囲内であれば贈与税がかかりません。

    • 子や孫への住宅取得資金贈与や教育資金贈与など、一定の条件を満たせば非課税枠が拡大される特例もあります。

    • 贈与は早めに始めるほど効果が高くなるため、年末は贈与計画を立てる良いタイミングです。

    ⚠️ ただし一度に高額な贈与をすると贈与税の対象になるため、年間の贈与額に注意しましょう。また、贈与契約書の作成や贈与税の申告が必要な場合もあります。

    ◎ 年末にやっておきたいチェックリスト

    • 財産リストの作成:預金、不動産、株式、保険、負債など、すべてを一覧化する。

    • 家族会議の開催:相続人となる人を確認し、相続や贈与に関する意向を話し合っておく。

    • 専門家への相談:税理士や司法書士など、相続に詳しい専門家へ相談し、節税や手続きの疑問点を解消する。

    • 資産評価の見直し:不動産の路線価や株価をチェックし、相続税額の試算を行う。

    • 贈与の計画:暦年贈与を利用する場合は、今年中に実行するかどうかを決めて実施する。

      年末は相続税対策を考える絶好の機会です。
      基礎控除や配偶者控除、小規模宅地等の特例、生命保険の非課税枠といった制度を上手に活用しつつ、
      早めに専門家に相談して、ご自身たちの家庭に合った計画を立てておきましょう。

    家族信託シリーズ 第4回:親が認知症になる前に備える家族信託の活用法

    2025年11月8日
    • 生前相続のご準備

    茅ヶ崎や寒川、藤沢など神奈川湘南地域でも、高齢の親の認知症対策として「家族信託」を活用するケースが増えてきています。

    親が認知症になって判断能力を失うと、銀行口座が凍結されて家族であっても預貯金を引き出せなくなったり、不動産の売却や契約行為ができなくなったりする恐れがあります。

    そのような事態に備え、親が元気なうちから家族信託を組んでおけば、親御さんの財産を柔軟に管理し、親の生活や相続対策に役立てることができます。

    本記事では、認知症になる前に備える家族信託の活用法について、家族信託が有効な理由任意後見制度との違い信託の仕組み契約のポイント、そして家族の合意形成の重要性を解説します。

     

    家族信託が認知症対策として有効な理由

    親が認知症を発症すると、本人名義の財産は資産凍結され、家族であっても勝手に動かすことができなくなります。

    例えば、親名義の銀行口座からお金を引き出したり、自宅などの不動産を売却したりするには、親御さんに判断能力が必要ですが、認知症が進むとこれらが困難になります。

    しかし、家族信託を利用して親の財産を信頼できる家族に託しておけば、親御さんの判断能力が低下した後でも、その財産を使って親の生活費や介護費用をまかなうことが可能です。

    信託契約によって子供(受託者)が親の財産を管理・処分できる権限を持つため、銀行口座の凍結や不動産の売却不能といった事態を避け、親の生活を経済的に支えることができます。

    認知症発症後も財産を柔軟に活用できる:家族信託なら、認知症になった後も預貯金の引き出しや不動産の処分がスムーズに行えます。
    相続対策にも有効:信託契約の中で、親が亡くなった後の財産の引き継ぎ先(受益者の二次指定)を決めておくことができるため、遺産分割の手間や争いを減らす効果も期待できます。

    このように家族信託は、親の認知症による資産凍結リスクを防ぐとともに、老後の生活資金の確保やスムーズな相続承継に役立つため、認知症対策として非常に有効な方法と言えます。

     

    任意後見制度との違いや使い分け

    親の認知症対策としては、家族信託のほかに任意後見制度(任意後見契約)も代表的な手段です。

    「任意後見制度」とは、将来本人の判断能力が不十分になったときに備えて、事前に信頼できる人(任意後見人)を後見人に指定しておく制度です。

    本人が元気なうちに公正証書で契約を結び、いざ認知症などで判断能力が低下した際には家庭裁判所に申立てをして契約を発効させます。

    任意後見人には、財産管理だけでなく身の回りの世話や医療・介護の契約手続きを代理する身上監護の権限も与えることができます。

    では、任意後見契約と家族信託は具体的に何が違うのでしょうか。主な違いを整理すると次のとおりです:

    効力発生のタイミング:家族信託は契約を結べばすぐに受託者による財産管理を開始できます。一方、任意後見契約は契約後すぐには効力が発生せず、本人の判断能力が低下したに家庭裁判所の手続きを経て任意後見人による支援が始まります。
    扱える範囲(権限)の違い:任意後見人は預貯金や不動産の管理に加え、介護サービスの契約や入院手続きなど、身上監護の範囲まで含めて本人を支援できます。しかし家族信託の受託者はあくまで財産管理に関する権限のみで、親の介護方針の決定や医療同意などの身上監護は行えません。
    裁判所の関与と管理の柔軟性:任意後見契約は将来発効すると家庭裁判所が任意後見監督人を選任し、後見人の業務を監督します。そのため定期的な報告義務や監督人への報酬支払いが生じ、公的なチェックが入る仕組みです。一方で家族信託は純粋な私契約であり、裁判所の関与がないため自由度が高く、家族の判断で柔軟かつ迅速に財産を運用できます。

    それぞれの制度にメリット・デメリットがあるため、状況に応じた使い分けが重要です。

    財産の積極的な運用・承継対策を重視するなら柔軟な家族信託が適しています。

    一方、生活介護のサポートまで含めたい場合は任意後見契約が役立ちます。

    また、両制度の併用も可能で、例えば不動産や預金の管理運用は家族信託で行い、医療・介護の契約手続きは任意後見人に任せるといった組み合わせにより、

    親の財産と生活の両面を万全に備えることもできます。いずれの場合も親が認知症になる前、判断能力がしっかりしているうちに準備することが大切です。

     

    信託財産を使って親の生活を守る仕組み

    家族信託を利用すると、親御さんの財産を子供が信託財産として管理し、親の生活のために活用することができます。

    典型的なケースでは、親が委託者(財産を託す人)兼受益者(財産から利益を得る人)となり、子供が受託者(財産を管理する人)となります。

    親が所有していた不動産や預貯金などを信託契約によって受託者である子供名義に移し替えることで、それらが「信託財産」となります。

    〈ケース例〉

    藤沢市にお住まいのBさん(子)は、認知症が心配な母親のために家族信託契約を結びました。

    母親(委託者・受益者)の自宅不動産と預金を信託財産とし、Bさんが受託者として管理します。

    後に母親の判断能力が低下しましたが、Bさんは信託された預金を引き出して介護施設の費用に充て、自宅不動産も必要に応じて売却することで母親の生活資金を確保することができました。

    このように信託財産であれば、親御さんご自身が契約や手続きを行えなくなった後でも、預けた財産を使ってその方の生活を支えることが可能なのです。

    また、信託財産は受託者の固有財産とは法律上区別されるため、仮に受託者個人に借金やトラブルがあっても、信託財産が差し押さえられる心配は基本的にありません。

    親の大切な財産を守りつつ、親のために使う仕組みが家族信託なのです。親御さんの生活を経済的に支えるうえで、家族信託は強力な手段となります。

     

    実務上の注意点(受託者の選任や信託契約の内容)

    家族信託を成功させるには、契約内容や運用方法をしっかり検討する必要があります。以下に、家族信託を組む際の主な実務上のポイントを挙げます。

    受託者を誰にするか

    信託財産を託す受託者は、財産管理の能力と信頼性を兼ね備えた人物を選びましょう。家族だからという理由だけで安易に選ぶのではなく、その人が責任感を持って親の財産を管理できるかを考慮します。

    子どもが複数いる場合は、適任者を主たる受託者に決め、別の兄弟姉妹を予備的な受託者(後継受託者)として定めておくこともできます。

    信頼できる親族がいない場合には、信託会社や信託業務を扱う専門家を受託者にする選択肢もあります。

     

    信託契約の内容設計

    信託契約書には、どの財産を信託の対象とし、受託者がどのような権限で財産を管理・処分できるかを具体的に定めます。

    不動産を売却する権限や、預貯金から親の医療費・介護費用を支出する方法など、細かな取り決めを盛り込んでおくことが重要です。

    また、信託の終了事由(通常は「委託者兼受益者である親が死亡したとき」)や、その後の財産の帰属先も契約で明記しておきます。

     

    信託財産とする資産の選定

    どの資産を信託に組み入れるかも検討が必要です。

    典型的には親名義の自宅不動産や預貯金が信託財産にされますが、他にも株式や貸付金など、将来管理が難しくなりそうな資産があれば信託を検討します。

    一方、日常生活に必要な少額の預金口座などはあえて信託せず親名義に残すケースもあります(ただし、それらの口座は認知症発症後に凍結されるリスクがある点に注意が必要です)。

    信託財産の範囲は家族の事情に合わせて柔軟に決めましょう。

     

    親が亡くなった後の取り決め

    家族信託では、親(受益者)が亡くなった後に信託財産を誰に引き継ぐか(残余財産の帰属先)を契約で指定できます。

    例えば「親が死亡したら信託財産を長男と長女で2分の1ずつ分配する」といった形です。

    これを決めておけば、親の死亡後に改めて遺産分割協議を行わなくても、信託の定めに従ってスムーズに資産を承継できます。

    後々の兄弟間の紛争防止にもつながるため、忘れずに取り決めをしておきましょう。

     

    契約手続きと専門家の活用

    家族信託の契約は公正証書で作成するのが一般的です。公証役場で公証人に作成してもらうことで、契約内容の証明力が高まり安心です。

    不動産を信託する場合は法務局での信託登記も必要になります。

    契約書の内容は専門的になるため、是非弊所にご相談いただき、サポートを受けながら進めることをお勧めします。

     

    家族の合意形成の重要性

    最後に、家族信託を進めるにあたっては家族の合意形成が欠かせません。

    どんなに良い制度や契約を用意しても、家族内で理解と協力が得られていなければ円滑に機能しないからです。

    親の財産を預かる以上、他の兄弟姉妹にも納得してもらった上で進めることが大切になります。合意形成にあたり押さえておきたいポイントは次の通りです。

    事前に家族会議を開く

    親御さんと子世代全員で顔を合わせ、家族信託を利用する目的や大まかな内容について話し合う機会を持ちましょう。皆が参加する場を設けることで、お互いの考えを共有しやすくなります。

     

    親の意思と気持ちを尊重する

    あくまで親自身の財産管理の話ですので、親御さんの希望や不安を丁寧に聞き取りましょう。

    家族信託をすることで親がどのようなメリットを得られるのか、逆にどんな心配があるのかを確認し、本人の意思を尊重して進めることが重要です。

     

    内容の透明性を確保する

    信託契約の内容(受託者は誰か、信託財産や管理方法、亡くなった後の分配方法など)は家族に隠さず共有します。

    特に一人の子が受託者になる場合、他の兄弟が内容を知らされていないと不信や誤解を招きかねません。

    契約締結後も、受託者は定期的に信託財産の状況を家族に報告するなど透明性を保つと良いでしょう。

     

    専門家に説明してもらう

    家族信託や任意後見といった制度について専門家から客観的に説明してもらうのも効果的です。

    司法書士など第三者の立場から制度趣旨や契約内容を説明してもらえば、家族内で共通理解が深まり、安心感にもつながります。

     

    家族全員が同じ方向を向いて協力し合うことで、初めて家族信託の効果が最大限に発揮されます。

    親の認知症や相続に備えて家族信託を検討中の方は、ぜひ一度ご家族で話し合いの場を持ってみてください。

    必要に応じて弊所にてサポートも受けながら、皆が安心できる形で大切な財産を守る仕組みを整えておきましょう。

    家族信託シリーズ第3回:障害のある子どものための家族信託

    2025年10月31日
    • 生前相続のご準備

    〖現在の状況〗

    ◆ 家族構成:父、母、長男、二男(障害あり)

    〖ご家族の悩み〗

    すでに二男の判断能力が低下した状態で、父が遺言書を遺さずに死亡した場合、遺された相続人たちはどうなるのか?

    何の対策もしなかった場合、方法は以下の2つに限られる。

    ① 二男に成年後見人を付けて、選任された成年後見人が二男の代わりに遺産分割協議に参加する。
    ※ 但し、法定後見制度の利用となり、二男が死亡するまで毎月3~6万円の後見人報酬が発生する。

    ② 法定相続分で遺産分割をする。
    ※ 法定後見の場合、二男の法定相続分を確保しなければなりません。。

    〖解決策〗

    上記の①②にならないように「受益者連続型信託」の応用パターンを活用する。

    〖設計プラン方針〗

    経済的負担や柔軟性が乏しい成年後見制度の利用を回避しつつ、障害がある二男の生活を確保する。

    〖プラン内容〗

    ・ 委託者 / 財産を託す人:父
    ・ 受益者 / 利益を受ける人:父
    ・ 受託者 / 財産を託される人:長男

    父に相続が発生した後、ここで信託を終了させずに(通常は委託者兼受益者が死亡すれば信託終了)、「①父の持つ受益権、②委託者としての地位」を二男に相続させる。

    結果、障害があり、すでに意思能力を失っている二男が、父が組成した「家族信託の流れに後から乗ることができる」というもの。

    二男は信託メリットを享受することができ、長男は引き続き「二男のために」財産管理をする。

    ※ 通常、すでに意思能力を失っている二男が信託契約の当事者にはなれないが、組成した契約当事者の「父の受益権」と「委託者としての地位」を相続させられれば、二男も委託者兼受託者になれる。

    家族信託シリーズ第2回:親の認知症対策としての家族信託

    2025年10月28日
    • 生前相続のご準備

    ---この記事では、親の認知症対策として家族信託を活用する方法について解説します。---

    親が認知症になったときに生じる財産管理の問題や、家族信託と成年後見制度の違い、そして早めに備えることの大切さがわかります。

    • 認知症になると資産がどうなる? 財産管理が困難になる理由とリスク

    • 家族信託とは何か? 認知症対策としての仕組みとメリット

    • 成年後見制度との違い:それぞれの特徴と家族信託を選ぶメリット

    親が認知症になると財産管理はどうなる?

    高齢の親が認知症になって判断能力が低下すると、銀行口座の管理や不動産の売却など 財産管理 が思うようにできなくなります。

    本人が契約や手続きを行えないため、家族であっても勝手に預貯金を動かしたり資産を処分したりできず、いわゆる「資産が凍結される」状態になってしまいます。

    こうした場合に備えて利用されるのが成年後見制度ですが、この制度では家庭裁判所を通じて後見人を選任し、本人に代わって財産管理を行います。

    後見人には親族が選ばれることもありますが、場合によっては第三者の専門家(弁護士や司法書士など)が選ばれることもあります。

    後見人は裁判所の監督下で財産を管理し、毎年その収支を報告する義務があります。

    成年後見制度を利用すれば、認知症の親の財産管理は一応可能になります。しかし、後見人が付くと本人の財産処分は非常に制約されます

    例えば、親名義の不動産を売却したり、生前贈与をしたりするには後見人だけでなく裁判所の許可も必要です。

    家族が「親のためによかれ」と思う資産の活用や相続税対策(生前贈与など)も、後見開始後は実質的に難しくなってしまいます。

    つまり、認知症発症後に後見制度に頼ると、思うような財産活用ができなくなるリスクが高いのです。

    家族信託とは?認知症対策としての仕組み

    そこで注目されているのが 家族信託 です。家族信託とは、家族間で財産を預けて管理・運用してもらう仕組みのことです。

    例えば、認知症対策としては、親御さん(財産を持つ人)が元気なうちに、自分の財産を信頼できる家族(子どもなど)に託して管理してもらう契約を結びます。

    信託契約を結ぶと、預けられた財産の名義は受託者(財産を管理する家族)に移りますが、その財産は信託の目的に沿って親のために使われます。

    親御さんは引き続き受益者として財産から利益を受け取ることができ、必要な費用を子どもに管理してもらえるのです。

    家族信託のメリットは、親の判断能力が低下した後でもスムーズに財産を管理・処分できる点にあります。

    信託によって受託者に権限を与えておけば、たとえ親が認知症になっても、不動産の売却や介護費用の捻出などを子どもが柔軟に行えます。

    成年後見制度のように都度裁判所の許可を得る必要もなく、親の生活や介護のために資産を有効活用できるのが大きな利点です。

    さらに家族信託では、親が亡くなった後の資産承継先も指定しておくことができます。

    たとえば「親が亡くなったら信託財産を配偶者や子どもに引き継ぐ」と信託契約に定めておけば、遺言書のような役割も果たします。

    これにより、認知症対策と同時に将来的な相続対策にもなり、一石二鳥の制度と言えるでしょう。

    家族信託と成年後見制度の違い

    成年後見制度と家族信託の大きな違いは、事前対策か事後対策かという点です。

    成年後見制度は認知症などで判断能力が失われた「後」で家庭裁判所に申し立てて利用する制度ですが、

    家族信託は本人が元気で意思判断ができるうちに「前もって」準備する制度です。

    この違いが、財産管理の自由度に大きく影響します。以下に主な違いをまとめます。

    • 手続きの違い:成年後見は裁判所での手続きが必要で、後見人の選任や定期報告など煩雑です。一方、家族信託は家族間の契約によって成立し、公証役場での公正証書作成などは必要ですが、裁判所の関与は原則ありません。

    • 財産処分の自由度:後見人制度では、資産の処分や運用には慎重な制限があります【たとえば、不動産売却には裁判所の許可が必要】。家族信託では、信託契約で定めた範囲内で受託者が判断して資産を動かせるため、状況に応じた柔軟な資産活用が可能です。

    • 費用や負担:成年後見では専門家が後見人になる場合、報酬が発生し毎年の報告事務も伴います。家族信託でも契約書作成に専門家のサポートを依頼すれば費用はかかりますが、信託が始まってからの継続的な報告義務はありません。

    こうした違いから、親の財産管理を家族の裁量で行いたい場合は家族信託の方が適していると言えます。

    ただし、家族信託は親が十分な判断能力を有する間にしか契約できません。認知症がかなり進行してしまった後では、もはや信託契約を結ぶことはできず、後見制度に頼らざるを得なくなってしまいます。

    家族信託を検討する際のポイント

    家族信託を活用するには早めの準備が肝心です。 親に認知症の兆候が出る前から、家族で話し合って対策を立てておくことをおすすめします。

    信託契約の内容(誰を受託者にするか、どの財産を信託するか、将来の受益者を誰にするか等)を家族でしっかり決める必要がありますので、専門家に相談しながら進めると安心です。

    契約内容によっては税金や他の相続対策との関係も出てきますので、総合的に検討することも重要です。

    しかし一度仕組みを整えておけば、親御さんが認知症になった後もスムーズに財産管理ができ、親の生活や介護に必要なお金を滞りなく使えるようになります。

    結果として、ご家族にとって経済的・精神的な負担の軽減につながるでしょう。

    まとめ:認知症対策は「今」がタイミング

    親の認知症による財産管理の問題に備えるには、家族信託という方法が有効であることを見てきました。

    成年後見制度と比べて事前の手間はありますが、その分、実際に認知症になった際には柔軟で円滑な財産管理が可能になります。

    大切なのは「元気なうちに備える」ことです。親御さんやご自身の将来に不安がある方は、ぜひ早めに家族信託の活用を検討してみてください。

    認知症になってからではできない対策だからこそ、今のうちに準備を進めておくことが家族の安心につながります。